スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク * - * * - * -

駅路 松本清張 新潮文庫

 これも短編集です。

「白い闇」
「捜査圏外の条件」
「ある小官僚の抹殺」
「巻頭句の女」
「駅路」
「誤差」
「万葉翡翠」
「薄化粧の男」
「偶数」
「陸行水行」

が収められています。
タイトルにもなっている「駅路」は停年を迎えた男の悲しい結末を描いています。仕事も真面目に務めあげ、家庭も荒波をたてず、子どもも無事育て上げ、これから自分のために生きたいとある行動をおこすのですが、それが悲惨な結果におわってしまいます。
大人になり家庭を持つって、そんなに我慢の連続なのかなあ、と感じました。
その中に、ささやかでも幸せを感じなかったのだろうか。
まあ、小説ですからね、そういう設定なのでしょうけれど。

最後に収められている「陸行水行」は、日本古代史を専攻する大学の講師が、邪馬台国のありかをさぐる民間の郷土史家に翻弄させられるのです。
古代史って、魅力的ですね。邪馬台国が九州にあったのか、近畿にあったのか論争があることは、素人の私も聞いたことがありますが、作者の思いもたくさん盛り込まれているような作品でした。

モリヤ * ま行 * 09:19 * comments(0) * trackbacks(0)

西郷札 松本清張 光文社文庫

 この短編集のタイトルにもなっている「西郷札」という短編が読みたかったのです。
これは作者がまだ朝日新聞西部本社にいたころに懸賞小説に応募し入選した作品です。その後直木賞候補にもなったそうで、松本清張のデビュー作です。

「西郷札」ってなんだろう、と思っていました。
時代は幕末から維新の頃。

抜粋
「さいごうさつ」 西南戦争に際し薩軍の発行した紙幣。明治10、西郷隆盛挙兵、集るもの4万。(中略)同年4月熊本に敗れ日向に転戦するに及び鹿児島との連絡が絶えたため、遂に六月に至って不換紙幣を発行した。(中略)発行総額は10万円を下らなかったという。額面の大なるものは最初より信用が乏しく小額のもののみ西郷の威望により漸く維持したが薩軍が延岡に敗れて鹿児島に退却するや信用は全く地に墜ち、ために同地方の所持者は多大の損害を蒙った。乱後この損害填補を政府に申請したが賊軍発行の紙幣の故を以て用いられなかった。

とあります。

抜粋
 これで疑問は解決した。これは薩軍の軍票のことである。おそらくこの出品者の父祖もこの不換紙幣をかかえて「多大の損害を蒙った」一人なのであろう。その子か孫かが家に残っていたものを出そうというのである。西郷ふだと読んだ連中は笑いだした。

私も「さいごうふだ」と読んでいたので、一緒に笑いました・・・・

お話はそのような歴史をもつ「西郷札」をめぐって、まったく歴史に関係のない嫉妬から、一人の男が陥れられるというものです。
男は罠にかけられ、自身ばかりでなく恩人2人を巻き込んでしまうのですが、その苦悩がひりひりと伝わってくるのでした。

この短編集は時代が江戸のものが多かったです。
「西郷札」
「くるま宿」
「或る『小倉日記』伝」
「火の記憶」
「戦国権謀」
「白梅の香」
「情死傍観」
が収められています。

「或る『小倉日記』伝」と「火の記憶」は、この本の前に読んだ新潮文庫の短編集にも収められていました。出版社を変えてよむとこういうことがあるから、短編集なんかは同じ出版社のもので読みたいのだけれど、たまたま新本も古本も新潮文庫から出ている「西郷札」の短編集が品切れだったのでした。

ただこの短編集には作者のあとがきがあり
「小説修業をしたことのない私は、どのような小説を志すべきか見当がつかなかった。ただ、他人の行く道は踏みたくなかった。」
などとあり、大作家松本清張のデビュ−のころの言葉が読めてよかったと思います。

また解説は島田荘司で、
この方の解説を読んでいると、あと1冊読んだら一度松本清張はおえて、違う作家にいこうを思っていたのに、あら、これも面白そう、これも読んでみたいという気持ちになってしまいます。またご自分の著書「秋好事件」もひきあいに出していて、あ・・・これ、夫の本棚にあったなあ・・・読んでみようかな・・・と、また読書の泥沼にはまっていきそうな私です。(うれしい)


モリヤ * ま行 * 08:10 * comments(0) * trackbacks(1)

ゼロの焦点 松本清張 新潮文庫

 ゼロの焦点がやっと我が家に着きました。
注文してから2週間、最長記録でしたなあ。

この作品は今、映画が公開中ですね。
私は映画を観ていませんが、
がんがんテレビでも宣伝しているので、
重要な役の女優さんたちのお顔がすっかりしみ込んでいて、
本を読んでいても、その人たちを想像してしまい
うまく自分のイメージが築けないままに読みました。
私は映画より小説を先に読むほうがいいなあ。
読んでから観るのは、楽しいけれど。

事件のもとになった背景が判ってくると、時代を感じました。
読み進めていくうちに、
ええーーっという事実が分かったり。

相手のことをほとんど何も知らず、
名前と年齢と勤務先しか知らないほど知らず、
お見合いで結婚し
それでもこれから未知の部分が互いに少しずつ溶け出して
夫婦になっていくのだろうと思う妻でしたが
夫が新婚旅行から戻り、勤務先の主張所の残務整理に行ったまま帰らなかったら、
それも転勤で、北陸から東京に勤務先が移り
これから一緒に暮らすのだというときに帰らなかったら、
そしてまだなにも夫のことを知らないという状況だったら

どんなに不安だろう。

夫の過去を辿っていくほどに明らかになっていくその経歴は
妻にとっては残酷なものであったのですが、
そこに絡む人々もまた
忘れ去りたい過去に苦しんでいたのでした。
誰もが今日を生き、明日を迎えるために必死だったのでした。

雲に覆われた低い空や、
断崖からのぞきこんだときの日本海の荒れた波。
夫を探して歩く北陸の冬の風景が
登場人物たちの心象風景とも重なって
作品全体を覆っていました。



モリヤ * ま行 * 08:21 * comments(0) * trackbacks(0)

或る「小倉日記」伝  松本清張 新潮文庫

 新潮文庫では、松本清張の傑作短編集というのが1から6まで出ています。
これはその(1)
大きな渦の中で繰り広げられるお話が多いので、長編が面白い作家なのかなと勝手に思っていたのですけれど、
この短編集、とーってもよかった。今までの作品の中で、一番好きです。
だいたいは文庫本にして30〜40ページほどの作品でした。
解説(平野謙)を読んで知ったのですが、
実在のモデルがいたり、また作者自身がモデルだったりする作品が多くありました。

この短編集に収められているのは
「或る『小倉日記』伝」
「菊枕」
「火の記憶」
「断碑」
「笛壺」
「赤いくじ」
「父系の指」
「石の骨」
「青のある断層」
「喪失」
「弱味」
「箱根心中」
の12編です。

「或る『小倉日記』伝」は芥川賞受賞作品で、作者の出世作でもあるでしょうから、読んでみたいと思っていましたが、ほかの短編もすばらしいです。

何か1つのことを変質的に情熱的に追い求める主人公がいます。
その情熱や成した仕事は、
周囲に受け入れられず、
またその人物の傲慢な態度から
疎まれ、はじきだされるのですが
彼らには救いのように、理解し支えてくれる妻や、夫や、母がいるのです。
その支えてくれる人々は
凡庸な人々で、主人公たちは支えてくれていることさえ理解できずにいたりもするのです。

物語はどれもハッピーエンドではありません。
でも、痛いほとの主人公たちの思いや、それを支える人々の温かな気持ちがしみ込んでくる物語なのでした。

しかし作品は決して人情物語ではありませんでした。
主人公たちの熱意や苦悩が描かれ、
淡々とした文章は、よぶんなセンチメンタルな気分を排除していて
それがさらに読者には、ずしんとひびくのでした。

注文している「ゼロの焦点」を読んだら(昨日、発送したと連絡がありましたが)
松本清張は一区切りと思っていたのですが、
この短編集があまりにもよかったので、さらに2冊、ポチッとしてしまいました。

抜粋
考古学者は日常遺物遺跡の取りあつかいにつとめその形を注意するのである。とくに数少ない幾人かの優れた学者は、物の深さを正確に現すことに成功した。しかし、物の深さはその物の深さによってかえって精神の深さよりも浅く見えることがある。つくられた物よりも、つくった精神のほうが常に深い」



モリヤ * ま行 * 09:11 * comments(0) * trackbacks(0)

眼の壁 松本清張 新潮文庫

 どの小説だったか忘れましたが、解説を読んでいて、
この「眼の壁」と「点と線」「ゼロの焦点」を傑作三部作と言う、というのを知って、
おお、そうであればぜひ読んでみたいと思ったわけです。

すべてネットでポチッとしたわけですが、
「ゼロの焦点」だけがまだ届きません。もう10日になるのに。
きっと、今映画が公開中なので、本もたくさん出ているのかもしれませんね。
「ゼロの焦点」だけは古本で出ていなかったもの。

これは手形の詐欺にあい、責任をとって自殺してしまった上司の死を悔やみ、謎を負う部下だった男が主人公です。もちろん会社員なので、なかなか捜査は進みません。学生時代からの親友の新聞社員とともに、事件にせまっていきます。
ただ背後にはとてつもなく大きな力が働いているわけです。

これはね、主人公がいい人だったので、読むほうも楽でした。
これもおそらく昭和30年代くらいが舞台なので
犯人を追って移動する手段はほとんどが列車、
主人公もその親友も飛行機に載ったことがない、など
レトロな気持ちがしました。

これはとっても面白かった。

モリヤ * ま行 * 08:11 * comments(0) * trackbacks(0)

わるいやつら(上)(下) 松本清張 新潮文庫

 松本清張の著作は、社会派の推理小説と言われることが多いのですってね。
たしかに、トリックや謎解きを重きにおいているのではなく、
犯罪の動機がおどろおどろしい人間の欲望だからなのでしょうか。
そして作品のおもしろさは、謎解きではなく
登場人物たちのどす黒い気持ちから生まれる物語なのですね。

これは推理小説というわけではないなあ、と思うのです。

「わるいやつら」は、ほんと、わるいやつらばっかりでてきます。
主人公も、そのまわりをかためる登場人物も、
みんないやーな人間ばかり。
その中で、騙し合い、利用しあい、とってもとってもどろどろしています。
だいたいは、たとえ犯罪を犯した主人公でも
どこかよりそって読めてしまい、
主人公の気持ちに加担してしまうことが多いのですが、
今回の小説は、
なんていやなやつなんだ、と思いながら読み終えました。
そんな登場人物ばかりなのに、最後まで面白く読めてしまうところが
この作品のすごいところなのだと思います。

昭和30年代の話だと思います。書かれた時期もその頃です。
金銭感覚がいまとは違うので、
百万円を女から搾り取る、なんとか1000万円を騙しとりたい、
なーんていう場面が多いのです。
今の金銭感覚に変えてみれば十倍くらいでいいかな、と想像しながら読みました。
百万長者ということばがあった時代ですからね。


モリヤ * ま行 * 08:01 * comments(0) * trackbacks(0)

けものみち(上)(下) 松本清張 新潮文庫

 <けものみち> カモシカやイノシシなどの通行で山中につけられた小径のことをいう。山を歩く者が道と錯覚することがある。

という文章が冒頭にありました。

人の道をはずれた人々のこわーいお話でした。
ある人物に唆されて夫を殺した女が人の道をはずしていく。
その女の変化はおどろおどろしく、いやらしく、吐き気さえもよおしそうなものでした。
そしてそのまわりの男達、実はこの男達が女をけものみちに導き、もっともっとおそろしい人物ばかりなのです。

こわいこわいお話でした。
とっても疲れちゃった。

モリヤ * ま行 * 08:14 * comments(0) * trackbacks(1)

黒革の手帖(上)(下) 松本清張 新潮文庫

 これはドラマ化もされている有名な作品です。
わりと近年、米倉涼子主演でテレビドラマをやっていましたよね。
私は観ていません。で、なんとなく知った気になっていますが、やはり知りませんでした。

15年間働き続けた銀行から7500万円を横領して、銀座にバーを持つ主人公。主人公は自分の欲望をかなえるために、つぎつぎと恐喝を繰り返します。
この作品が発表されたのは昭和55年とありますから、金銭の感覚もその当時だと想像して読めば、女一人で、なんともあっぱれな主人公です。
魑魅魍魎が巣食う小説に出てくる舞台は、ドラマ化するにはもってこいって感じです。

こまかなところの具体性がとってもすごいなあと思ったのでした。
店を買うときの金額やら、主人公の皮算用がまたとっても具体的で。
小説ってさ、こういう細部が大切なのよね。

モリヤ * ま行 * 08:25 * comments(0) * trackbacks(0)

黒い空 松本清張 角川文庫

 松本清張ってとっても有名な作家で、作品も映画化されたりテレビドラマ化されたりしているので、なんとなく読んでいる気持ちになるのだけれど
まだ読んだことがないなあ、と思ったのが1年ほど前。
で、その時に何冊か買ったのだけれど
それから中国物にはまってしまったので、今まで読まずにきました。
が、今回は読んでみようと思って、1作目です。

16世紀に起こった「河越夜戦」。場所は今でいうと埼玉県川越市あたり。
上杉家を北条家が攻め、撃ち落としたという夜戦。
その史実を下敷きにして物語が進むのです。
実際に事件が起こるのは、現代の八王子市郊外。山内上杉家の末裔である定子は、婿養子の善朗に殺されてしまします。

推理小説ですから、ストーリーを書いてもしょうがないよね。

なんかね、松本清張ってもっとおどろおどろしい世界なのかなと思っていたけれど、この作品は、そうでもなかったかなあ。どちらかと言えば淡々としているのね。と、いうより単なる私の先入観だったのでしょうか。そして淡々としているように感じるのは、文章が簡潔で読みやすいからかもしれません。
もう何冊か読んでみたいです。

ただ、烏の描写だとか、風景や建物の描写が緻密でした。烏が気味の悪い声をあげて、空を真っ暗になるほど覆うところは、読みながらぞっとしました。
風景や、建物の描写も、ときどき立ち止まって頭に情景を浮かべて組立てないとこんがらかってしまうほど。そして史実の説明なども、入り組んでいて頭の中で整理しながら読まないと、大事な伏線を読み逃してしまいそうだと緊張しました。



モリヤ * ま行 * 08:42 * comments(0) * trackbacks(0)

1Q84 村上春樹 新潮社

今、話題の作品ですね。
なかなか手にはいらないとも聞いていますが、書店で注文して読みました。

彼が小説を書く、ということについて語っている文章がとても好きで、いつも泪してしまうのですが、
やはり小説家は小説を読むのがいちばん!

1巻、2巻ともに500ページもある長編でしたが、いっきに読みました。
青豆と天吾という2人の主人公の2つのお話が、交互に出てきますが、それがだんだんと接点を持っていきます。
どちらもはらはらする展開でした。主人公は二人共孤独な人間ですが、お話の中で彼らの哀しみと善意のようなものを感じました。

メモ
「で、そういうことをしますと、そのあとの日常の風景が、なんていうか、いつもとはちっとばかし違って見えてくるかもしれない。私にもそういう経験はあります。でも見かけにだまされないいように。現実というのは常にひとつきりです。」

そのとおりだ。ひとつの物体は、ひとつの時間に、ひとつの場所にしかいられない。アインシュタインが証明した。現実とはどこまでも冷徹であり、どこまでも孤独なものだ。

物語の森では、どれだけものごとの関連性が明らかになったところで、明快な解答が与えられることはまずない。そこが数学との違いだ。物語の役目は、おおまかな言い方をすれば、ひとつの問題をべつのかたちに置き換えることである。そしてその移動の質や方向性によって、解答のあり方が物語的に示唆される。

「私も歴史の本を読むのが好きです。歴史の本が教えてくれるのは、私たちは昔も今も基本的に同じだという事実です。服装や生活様式にいくらかの違いはあっても、私たちが考えることややっていることにそれほどの変わりはありません。人間というものは結局のところ、遺伝子にとってただの乗物であり、通り道に過ぎないのです。彼らは馬を乗り潰していくように、世代から世代へと私たちを乗り継いでいきます。そして遺伝子は何が善で何が悪かなんてことは考えません。私たちが幸福になろうが不幸になろうが、彼らの知ったことではありません。私たちはただの手段に過ぎないわけですから。彼らが考慮するのは、何が自分たちにとっていちばん効率的かということだけです」
「それにもかかわらず、私たちは何が善であり何が悪であるかということについて考えないわけにはいかない、そういうことですか?」

その手のオカルト的なものごとに興味がまったく持てません。大昔から同じような詐欺行為が、世界の至る所で繰返されてきました。手口はいつだって同じです。それでも、そのようなあさましいインチキは衰えることを知りません。世間の大多数の人々は真実を信じるのではなく、真実であってもらいたいと望んでいることを進んで信じるからです。そういう人々は、両目をいくらしっかり大きく開いたところで、実はなにひとつ見てはいません。

 
モリヤ * ま行 * 10:56 * comments(2) * trackbacks(0)
このページの先頭へ