<< ブラフマンの埋葬 小川洋子 講談社 | main | 刺繍する少女 小川洋子 角川文庫 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク * - * * - * -

ミーナの行進 小川洋子 中央公論社

温かな物語でした。
時代はミュンヘンオリンピックがあった年。
中学生になる春に、
主人公の朋子は家庭の事情で、母の妹の家に1年間居候することになります。
その家での1年間、その家の人々と暮らした1年間のお話でした。

これは作者の自伝的な物語なの?と想像してしまう、読者の楽しみもありました。(実際はどうかわからないけれど)

小川洋子の作品には喘息の少女がよく出てくるけれど、
ミーナもまた喘息を持っています。

静謐な文章と、おくゆかしい人々が出て来るのはいつもと同じですが、
1つ1つのこまかい出来事や登場人物の設定は、大胆で
カバが出てきたり、
またこの作品ばかりでなく、
現実ばなれしたことがらや、ユニークな癖を持った人々が出て来るのですが、
それがすんなりなじんでしまうから不思議です。

私が好きな登場人物は、
これまた小川洋子の作品に出てくる人物の性質ですが、
自分が果たすべき役割を心得ていて、それを一生懸命にやる、性質を持つ人たち。
今回の作品では、サルだったけれど。

喘息の為に長く坂道を歩くことができず、
ペットのカバに乗って通学するミーナが、
バレーボールに夢中になって、(今で言えば)エアバレーをやったり
カバの死を看取ったり、
淡い初恋を経験しながら
少しずつ大人になっていくのを
傍らで朋子が見つめているのです。
やがて1年が過ぎ、朋子は母のもとへ戻るのですが、
大人になってからのミーナの消息が描かれている部分は、
読者も思わずほっとしてしまうのでした。
温かな読後感のある物語でした。

抜粋(メモ)
しかし、現実が失われているからこそ、私の思い出はもはや、なにものにも損なわれることがない。

伯母さんはただ、活字の砂漠を旅し、足元に埋まった1つの誤植を救い出そうとしていただけだ。彼女自身の言葉を借りれば、それは砂の海に輝く一粒の宝石であったらしい。もし掘り出さないでいれば、誤植は長い年月闇に埋もれたままになってしまう。誰の目に留まることもなく、踏み潰され、置き去りにされる。

フレッシー動物園で自分が果たすべき役割を心得ているだけやのうて、責任感さえ持ってる猿だったんよ

芦屋の夏は海の方から駆け上ってくるようにしてやってきた。梅雨が明けた途端、それまでどんよりと曇った空に飲み込まれていた海が、鮮やかな色を取り戻し、視界の隅から隅まで一本の潮の香りを含んでから山裾に向かってせり上がってきた。あれ、海が昨日より近くにある、と思った時が、夏の訪れの合図だった。






JUGEMテーマ:読書


モリヤ * あ行 * 12:37 * comments(0) * trackbacks(0)

スポンサーサイト

スポンサードリンク * - * 12:37 * - * -

コメント

コメントする









トラックバック

このページの先頭へ