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或る「小倉日記」伝  松本清張 新潮文庫

 新潮文庫では、松本清張の傑作短編集というのが1から6まで出ています。
これはその(1)
大きな渦の中で繰り広げられるお話が多いので、長編が面白い作家なのかなと勝手に思っていたのですけれど、
この短編集、とーってもよかった。今までの作品の中で、一番好きです。
だいたいは文庫本にして30〜40ページほどの作品でした。
解説(平野謙)を読んで知ったのですが、
実在のモデルがいたり、また作者自身がモデルだったりする作品が多くありました。

この短編集に収められているのは
「或る『小倉日記』伝」
「菊枕」
「火の記憶」
「断碑」
「笛壺」
「赤いくじ」
「父系の指」
「石の骨」
「青のある断層」
「喪失」
「弱味」
「箱根心中」
の12編です。

「或る『小倉日記』伝」は芥川賞受賞作品で、作者の出世作でもあるでしょうから、読んでみたいと思っていましたが、ほかの短編もすばらしいです。

何か1つのことを変質的に情熱的に追い求める主人公がいます。
その情熱や成した仕事は、
周囲に受け入れられず、
またその人物の傲慢な態度から
疎まれ、はじきだされるのですが
彼らには救いのように、理解し支えてくれる妻や、夫や、母がいるのです。
その支えてくれる人々は
凡庸な人々で、主人公たちは支えてくれていることさえ理解できずにいたりもするのです。

物語はどれもハッピーエンドではありません。
でも、痛いほとの主人公たちの思いや、それを支える人々の温かな気持ちがしみ込んでくる物語なのでした。

しかし作品は決して人情物語ではありませんでした。
主人公たちの熱意や苦悩が描かれ、
淡々とした文章は、よぶんなセンチメンタルな気分を排除していて
それがさらに読者には、ずしんとひびくのでした。

注文している「ゼロの焦点」を読んだら(昨日、発送したと連絡がありましたが)
松本清張は一区切りと思っていたのですが、
この短編集があまりにもよかったので、さらに2冊、ポチッとしてしまいました。

抜粋
考古学者は日常遺物遺跡の取りあつかいにつとめその形を注意するのである。とくに数少ない幾人かの優れた学者は、物の深さを正確に現すことに成功した。しかし、物の深さはその物の深さによってかえって精神の深さよりも浅く見えることがある。つくられた物よりも、つくった精神のほうが常に深い」



モリヤ * ま行 * 09:11 * comments(0) * trackbacks(0)

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